5/13 にさくらのクラウドのGSLBサービスにて、実サーバとしてIPv6のアドレスを登録できるようなリリースを行いました。
この機能拡張により、これまでのIPv4に加え、IPv6でもシステムの可用性を向上させることができるようになりました。
GSLBを簡単にいってしまうと「高可用・分散環境に置かれたヘルスチェック付きのDNSサーバ」です。
今回、ヘルスチェックの部分においてIPv6の実サーバへのリーチャビリティを確保し、実サーバとしてIPv6のサーバを登録した際に、AAAAレコードを返すことができるようになりました。今のところIPv6でのDNSの問い合わせは対応しておらず、IPv4での問い合わせのみになります。
GSLBにて重み付け応答「無効」を設定し、実サーバとして、IPv4のアドレス「203.0.113.4」「203.0.113.5」、IPv6アドレス「2001:db8::4」「2001:db8::5」を登録した際のDNSレスポンスは次のようになります
% dig +nocmd +nocomment +nostat site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp ;site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp. IN A site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp. 0 IN A 203.0.113.4 site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp. 0 IN A 203.0.113.5 % dig +nocmd +nocomment +nostat site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp AAAA ;site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp. IN AAAA site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp. 4 IN AAAA 2001:db8:1::4 site-NNNNNNNNNNN.gslb.sakura.ne.jp. 4 IN AAAA 2001:db8:1::5
このGSLBサービスは gdnsd というソフトウェアを利用して実現、提供させていただいております。こちらでも紹介しております。
gdnsd はWikipediaのWikimedia Foundationが提供しているOSSです。
各種のヘルスチェック方式をサポートし、Geolocationや重み付けに基づいた応答などに対応している便利なDNSサーバソフトウェアです。
今回、GSLB(gdnsd)のサーバからIPv6のリーチャビリティを用意するにあたり、高可用・分散環境で動作している既存のサーバをリスクを取りながら構成を変更して直接IPv6アドレスを持たせるのではなく、別途IPv4/IPv6デュアルスタック構成のサーバを用意し、ヘルスチェックをそちらのサーバ経由で行うようにしています。
また、既存の動作への影響を減らすため、GSLBに登録されたサービスにIPv6のアドレスが含まれる際にのみ、監視代理サーバを経由するようになっております。
そして、この監視代理サーバで利用しているのが、Go言語で書いたisiusというWebサーバです。
今まで覚えきれない感じのProxyサーバを書いていますが、isiusもその一種になります。これまでサーバやコマンドを実装する際に、IPアドレスとポートを雑に「:」で結合してしまうなどIPv6に配慮しておりませんでしたが、isius実装時は反省や学びが多くありました。
isiusを起動し、
% curl -v localhost:3000/check_ping/3/10/1000/2001:db8:1::4
とアクセスすると、2001:db8:1::4 に対して、1sのタイムアウト、10msecの間隔で3回pingによる監視を行い、その結果を返します。pingだけではなく、GSLBに必要なtcp、http、httpsの監視が実装されています。
https監視の際のURLは
% curl -v localhost:3000/check_https/{method:(?:GET|HEAD|get|head)}/{ip}/{port:[0-9]+}/{expected_status:[0-9][0-9][0-9]}/{host}/{path:.*}
のようになっております。
そして、gdnsdからは外部コマンドを実行するヘルスチェック機能を使い、nagiosのhttp監視コマンド互換の「check_http2」コマンドを使って、正しいレスポンスが返ってくることを監視しています。
service_types => { http_mon => { plugin => "extmon", cmd => ["/usr/local/bin/check_http2","-I","localhost","-p","3000","-u","/check_http/head/%%ITEM%%/80/200/-/live","-e","HTTP/1.1 200","-A","gdnsd-monitor"], interval => 10, timeout => 5, up_thresh => 5, ok_thresh => 3, down_thresh => 2 } }
設定中の「%%ITEM%%」が実サーバのIPアドレスに変換され、コマンドが実行されます。ヘルスチェックでアクセスする際のパスやホストヘッダ、期待するHTTPステータスはお客様がコンソールやAPIで指定できるようになっております。
check_http2ではなくcurlでも監視はできそうですが、自分でつくった監視コマンドは痒い所に手が届くのでこちらを利用しております。check_http2コマンドもgithubにあります。
check_http2の機能は段階的に増えており、さまざまなサービスで利用しています。 一社に一つは、http監視コマンドを作ると便利ですね。
このようにして、GSLBhのIPv6対応を行いました。GSLBはリージョンやデータセンターを跨ぐようなバランシングに使うというイメージがありますが、実際にはシンプルにヘルスチェック付きのDNS-RRとして利用することができます。ボトルネックの少ないロードバランサの代わりとしても利用できます。機会があればご利用くださいませ。
今後もさまざまなサービスの機能追加、改善を行っていきますので、よろしくお願いします。